法定雇用率を達成できなくても、罰金がすぐに科されるわけではありません。ただし「何も起きない」わけでもありません。未達成の状態を放置すると、ハローワークの行政指導が段階的に進み、最終的には厚生労働大臣による企業名公表に至ります。この記事では、その5段階の流れと、指導の対象となる目安を整理します。
「納付金を払えば済む」ではない
未達成企業がまず直面するのは納付金(常用労働者100人超の場合、不足1人あたり月額5万円)ですが、納付金はあくまで制度上の負担金であり、納めても雇用義務そのものは残ります。金額の仕組みは納付金と調整金の解説記事に譲りますが、押さえておきたいのは、納付金と行政指導は別の仕組みとして並行して動くという点です。つまり「払っているから指導されない」ということはありません。
行政指導の5段階
雇用状況が一定の基準を下回る企業には、ハローワークから次の流れで指導が行われます。
- 1. 雇入れ計画作成命令──2年間の雇入れ計画の作成を命じられます
- 2. 計画的な実施の指導──計画期間中、定期的に進捗確認が行われます
- 3. 計画の適正実施勧告──計画どおりに進んでいない場合、勧告を受けます
- 4. 特別指導──勧告後も改善が見られない場合、9か月間の集中的な指導が行われます
- 5. 企業名公表──それでも改善しない場合、障害者雇用促進法第47条に基づき企業名が公表されます
命令から公表までは数年がかりのプロセスであり、各段階で改善すれば先へは進みません。裏を返せば、公表に至る企業は「長期間、改善の機会がありながら動かなかった」と見なされるということです。公表は厚生労働省の発表として報道にも載るため、採用・取引・金融機関との関係など、影響は雇用の枠を超えて経営全体に及びます。
どんな企業が対象になるのか
雇入れ計画作成命令の対象となる目安としては、「実雇用率が全国平均を下回り、かつ不足数が5人以上」「法定雇用障害者数が3〜4人の規模で1人も雇用していない」といった基準が用いられています。
2026年7月の法定雇用率2.7%への引き上げで新たに義務対象となった企業(常用労働者37.5人以上)が、直ちに命令の対象となるわけではありません。ただし、雇用義務が1人の企業でも「雇用ゼロ」の状態が続けば、ハローワークからの雇用状況の確認や来所依頼といった働きかけは始まります。自社が対象かどうかの確認方法は法定雇用率2.7%の解説記事にまとめています。
もうひとつ注意したいのは、行政指導とは別に、障害者雇用率の未達成が一部の雇用関係助成金の不支給要件に関わる場合があることです。未達成の影響は、納付金の額面だけでは測れません。
まず、最初の一歩
指導の枠組みを知ると「急いで誰かを雇わなければ」と考えたくなりますが、準備のない採用は早期離職につながり、かえって遠回りです。行政指導への最も確実な備えは、雇入れ計画を命じられてから慌てて作ることではなく、命じられる前に自社のペースで採用と受け入れの計画を立てておくことです。任せる業務の整理から始める手順ははじめの一人を迎える準備の記事で解説しています。まずは自社の雇用義務数と現在の充足状況を確認するところから始めてください。
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法定雇用率2.7%時代の経営環境レポート(PDF・14ページ)
本記事のテーマを含む、最新の行政データ・行政指導5段階・2027年法改正の展望を、経営判断向けに一冊へ整理しました。経営チェックリスト10項目付き。すべて厚生労働省の一次資料に基づき、出典リンク付きで作成しています。
